弁護士/京都 姉小路法律事務所(離婚・相続・家事事件全般)

3.財産分与


よくある相談例

■婚姻前から夫(妻)名義となっている不動産がありますが,これも財産分与の対象となりますか? → 3
■婚姻後に住宅ローンを組んで購入した不動産がありますが,いま売却しても,その代金で残りのローンを完済することはできません。このような場合,財産分与はどうなりますか? → 4
■夫(妻)は長年勤めていた会社を1年後に定年退職するので,多額の退職金が入ってくる予定なのですが,財産分与に含まれますか? → 5 


1.財産分与とは


財産分与とは,平たく言えば,夫婦が婚姻中に築いた財産を離婚によって清算することです。
現預金,不動産,自動車,貴金属,保険など幅広い財産が対象となりえます。 折り合いがつかない場合は裁判所の判断を仰ぐことができるのですが,そこでは,従来は,専業主婦の場合は2分の1に満たない分与しか認められませんでした。

しかし,近時は,夫婦が婚姻中に築いた財産は夫婦で2分の1ずつに分けるべきであるという考え方(「2分の1ルール」と呼ばれることがあります)が強くなりつつあります。 
なお,このような清算のための財産分与とは別に,「扶養的財産分与」という概念もあります。離婚によって夫婦の一方が経済的に困窮する場合には,経済的自立の目処が立つまでの間の扶養を相手方に求めることができます。
例えば,病気などのため直ちに収入を得る見込みがない場合や,乳幼児を自ら育てる必要があり当面は就職できない場合が考えられます。

認められる分与の方法や期間などはまさにケースバイケースです。
金銭の分与のほか,一方の所有不動産に無償で居住することを認める例もあります。



2.財産分与の手続


財産分与は,(元)夫婦の一方が他方に請求する形を取りますが,財産分与について話合いがまとまらない場合,家庭裁判所に財産分与を求める調停の申立てができます。
ただし,離婚後の場合は,離婚が2年以内にしなければなりません。
離婚前の場合は,離婚調停の中で財産分与も含めて採り上げることができます。 

調停の申立て方については,以下の裁判所のウェブサイトなどが参考になります。  http://www.courts.go.jp/saiban/syurui/kazi/kazi_07_04.html  

妥協点が見つからず調停が不成立になった場合,審判手続に自動的に移行します(これに対し,離婚調停が不成立となった場合は,自ら離婚を求める訴訟を提起しなければ離婚訴訟へと進展しません)。 
審判では,裁判官(審判官)が,当事者双方がその協力によって得た財産の額など一切の事情を考慮して,分与をさせるべきかどうかや分与の額・方法について判断を下します。 



3.財産分与の対象となる財産


最初にご説明したように,夫婦が「婚姻中に築いた」財産を分けるわけですから,財産分与の対象となる財産は,夫婦の共有財産といえるものに限られます。 
この点,例えば,夫名義の不動産であっても,夫婦が婚姻中に築いた財産であるといえるのであれば,財産分与の対象となります(形式的には単独所有であることから,「実質的共有財産」と呼ばれることがあります)。 

他方,
①夫が婚姻前に築いた財産や,
②婚姻中であっても例えば夫が自分の親の相続で取得した財産

などは,財産分与の対象とはなりません(このような財産のことを「特有財産」といいます)。 



4.自宅不動産の財産分与


自宅不動産は夫の単独名義となっていることが多く,また,共有名義となっている場合でも,夫の持分の方が大きくなっていることがよくあります。
しかし,夫婦で築いた財産といえるのであれば,既にお話ししたように,実質的共有財産として,その分与を妻は求めることができます。 
ただ,自宅不動産には住宅ローンが残っているケースが少なくありません。その場合,住宅ローンの担保として,自宅不動産には金融機関のために抵当権が設定されているのが通常です。

そこで,この不動産の時価から住宅ローン残を差し引いたものが,財産分与の対象財産としての自宅不動産の価値ということになります。
なお,不動産の時価を調べるには,不動産業者による無料の簡単な査定を受けることが考えられます。 では,不動産の時価よりも住宅ローンの残高の方が多い場合(このような状態のことを「オーバーローン」と言います)はどうなるのでしょうか。
形式的には,この自宅不動産自体には価値がないことになり,逆に,オーバーしている分のローンという債務(マイナスの財産)を分与することになりかねません。

このような事態は双方にとって好ましくないため,不動産を売却することなく(住宅ローンを残したままにして),一方が引き続き居住することにして,ローンの返済の負担や居住条件,名義変更などを話し合いで決めるのが望ましいといえます。


 

5.退職金の財産分与


例えば夫が受け取る退職金は,退職金は賃金の後払いの性質もあるところ,妻のサポートがあったからこそ働き続けることができたと考えられることから,やはり夫婦で築いた財産として,財産分与の対象となりえます。
もっとも,既に退職金の支給を受けて夫名義の預金となっている場合は,この預金自体が,夫婦の実質的共有財産であるとみることもできます。 では,定年までにはまだ数年あり,退職金を実際に受け取るのが数年先であるような場合はどうなるのでしょうか。
このような場合,退職金は離婚の時点では現実化していない財産であるものの,将来受け取ることがほぼ確実なのであれば,財産分与の対象に含まれないとすると極めて不公平な結果となります。
実際の裁判例を2件ご紹介しましょう。

まず,6年後に夫が定年退職するケースで,即時に妻に財産分与として支払うことを命じたものがあります【東京地判平成11年9月3日】。夫婦の実質的な婚姻期間に対応する分につき,6年早く受け取れる点を割り引いた金額の5割の分与を認めています。

また,8年後に定年退職するケースで,実際に退職金の支給を受けたときに支払うことを命じた事例もあります【名古屋高判平成12年12月20日】。この事例では,現時点で自己都合で退職した場合の退職手当金額をベースとして金額が算出されています)。 退職金は高額にのぼることが多いこともあり,協議や調停などで紛糾することが珍しくありません。そのような場合は,どのような根拠で,いくら請求するか(反対の立場であれば,いくらなら支払うか)について弁護士に相談されることをおすすめします。