2.遺産分割
よくある相談例
■相続人のあいだで折り合いが付かず遺産分割の協議が難航しています。どのように進めていけばよいでしょうか?
→ 1,2
■遺言書があるのですが,この遺言書と違う内容の遺産分割をすることはできますか?
→ 1
■めぼしい遺産は不動産のみです。どのような遺産分割が考えられますか?
→ 3
■特別受益と寄与分という言葉をよく聞きますが,どうやって主張すればよいのでしょうか?
→ 4, 5
■遺産分割はいつまでにしなければならないのですか?
→ 1
1.遺産分割協議
相続が発生した場合,まずは相続人の間で遺産分割のための協議を行うのが一般的です。
相続人全員の同意はオールマイティであり,
たとえ遺言書があっても,その遺言内容に反する遺産分割をすることもできます。
相続人間で協議がまとまった場合は,後々紛糾することのないように,「
遺産分割協議書」を取り交わすべきです。
特に不動産の名義変更をする場合はこの遺産分割協議書が必須となります。
この協議書の内容に不備があれば不動産登記手続がスムーズにできないこともありますので,
当事務所では,登記の専門家である司法書士と連携を取って,遺産分割協議書の作成にあたります。 なお,
遺産分割の時期に制限はありません。もっとも,相続税との関わりでは,相続税の納期限までに遺産分割がなされていないと,小規模宅地等の評価減や配偶者の税額の軽減といった特例が適用できないで申告を要するという問題があります。
2.遺産分割の調停と審判
相続人の間で協議がまとまらない場合は,家庭裁判所に遺産分割の調停を申し立てるのが一般的です(いきなり審判の申立てをすることも法的には可能です)。
調停では,2名の調停委員が,対立する当事者間の意見調整を行います。折り合いが付けば,調停が成立して事件が終了します。 他方,折り合いが付かない場合は,調停は不成立となり,引き続き審判に移行します。その後も,話し合いによる解決の可能性もありますが,最終的には審判が下されて決着が付きます。 審判となった場合に注意が必要なのは,
金銭債務等は
遺産分割の対象には含まれないのが原則である点です。
例えば,被相続人に借入金があった場合は,相続分に応じて相続人は分割して負担することになります。 また,これは審判に限ったことではありませんが,遺産分割の対象となる
不動産の価値については,
分割時の時価が基準となります。いわゆる路線価であると誤解している人も多いのですが,路線価はあくまでも相続税に関する基準です。
3.遺産分割の種類
遺産分割には,つぎのような種類があります。
①現物分割:遺産を構成する財産自体を分割します。最もオーソドックスな分割方法で,現預金が遺産の全てであるような場合には問題なく妥当します。
②代償分割 もっとも,遺産に不動産などが含まれると,各相続人の相続分どおりに遺産を分割することは困難であることから,取り分が多くなる相続人が他の相続人に金銭を支払うことで調整するケースもよくみられます。
③換価分割 遺産を売却してしまい,その売却代金を相続人間で分ける方法です。
処分に要する費用が発生することに加え,譲渡所得税が問題となることに注意を要します。
4.特別受益
被相続人から遺贈を受けたり,
婚姻や生計の資本として贈与を受けた相続人のことを「
特別受益者」と言います。相続において,この特別な利益を考慮しないと相続人間で不公平となります。
そこで,民法は,このような特別受益者がいるときは,本来の相続財産に特別受益分を加えたもの(これを持ち戻しと言います)を相続財産とみなして各人の相続分を算定し,特別受益者の相続分については特別受益分を控除するものと定めています。
例えば,相続人がAとBという2名の子で,相続財産が5000万円のケースで,Aだけが自宅購入資金として被相続人から1000万円の贈与を受けていた場合,まず,5000万円に特別受益の1000万円を加えた6000万円が相続財産とみなされます。
そして,2名の子の相続分は本来は2分の1ずつですので,Bの相続分は3000万円となり,他方,特別受益者であるAは3000万円から特別受益分の1000万円を控除した2000万円が相続分となります。
このように,5000万円分の遺産が2000万円分(A)と3000万円分(B)に分けられます。
被相続人からの生前の贈与の全てが特別受益に該当するわけではないため,調停や審判では,この
特別受益性が争われるケースが多いです。
また,親族間での過去の贈与であるという性質から,
贈与自体の立証が困難なケースも散見されます。
5.寄与分
特別受益と類似の調整の制度として,
寄与分というものもあります。
これは,共同相続人の中に,
被相続人の事業に関する労務の提供または財産上の給付,被相続人の療養看護などの方法によって,被相続人の財産の維持や増加につき特別の寄与をした者があるときに,やはり相続分の調整を行うというものです。
調整のしかたは,ちょうど特別受益の反対で,相続財産から寄与分を控除したものを相続財産とみなして各人の相続分を算定し,特別の寄与をした者の相続分にはその寄与分を加えます。 例えば,相続人がAとBという2名の子で,相続財産が5000万円のケースで,Aだけが被相続人の生前に長年月にわたってその療養看護に努めた場合,その寄与分が1000万円と認められるときは,まず,5000万円に寄与分の1000万円を控除した4000万円が相続財産とみなされます。
そして,2名の子の相続分は本来は2分の1ずつですので,Bの相続分は2000万円となり,他方,特別の寄与をしたAは2000万円に寄与分の1000万円を加えた3000万円が相続分となります。
このように,5000万円分の遺産が3000万円分(A)と2000万円分(B)に分けられます。
寄与分については,労務提供型と療養看護型に大別されますが,いずれに関しても「特別の寄与」と言えるかが争点となります。