コラム 119 冷凍保存した受精卵で別居中の妻が妊娠 -父子の親子関係は?- 2017/2/24

 
コラム119(圧縮)

別居中の妻が,冷凍保存していた受精卵を移植して出産した子について,夫が「同意のない出産である」として嫡出否認の訴えを提起したという新聞記事がありました。

民法では「妻が婚姻中に懐胎した子は,夫の子と推定する」(民法772条1項)とされ,婚姻中に妊娠した子どもは法律上夫の子どもであるとされています。
もし,夫が子どもとの親子関係をなくしたい場合は,夫が,嫡出否認の訴えを提起する必要があります。(民法775条)

この夫婦は,2013年に不妊治療の一環として体外受精を実施し2014年に別居,別居から約一年後に妻が冷凍してあった受精卵を移植する手術を受け2106年に長女を出産したとのこと。妻が冷凍受精卵の移植手術を受ける際には,夫の同意書も提出されていたけれど,夫は同意していないと主張。妻は夫の同意書の署名は妻自身が行ったことを認めたうえで,夫は別居後も不妊治療を継続することに同意しており,署名は夫の意思にもとづく代筆であり有効という反論をしているそうです。

この裁判,裁判所が妻が行った署名を夫の意思に基づくもとだと認定すれば,嫡出否認の訴えは棄却されることになります。

では,逆に,裁判所が「夫の同意はなかった」と認定した場合,嫡出は否定されるのでしょうか?
夫婦の婚姻中に妻が妊娠した子なので,772条の形式的には嫡出推定が及ぶ子どもです。
そして,生物学的にも夫が子の父です。「同意がなかった」といって簡単に嫡出を否認してよいのかという疑問が残ります。
一方で,この妻の妊娠は夫の意思が関与することなく成立したものです。「同意をしていない」妊娠で誕生した子に対しても法律上の親子関係が認められるというのは夫の立場からすれば酷です。

772条は,夫の同意なく成立する妊娠というものを想定していません。
このように法律制定時には想定されていなかった事態につき,裁判所がどのように判断するのか注目しています。

弁護士  辻 祥子

 

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