「想定どおり」であった夫婦同姓規定の最高裁判決 2015/12/21

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12月16日に言い渡された最高裁大法廷が合憲との判断を下したことはご承知のとおりです。
再婚禁止期間の規定を違憲とする判決とともに,私もそのひとりですが,おおかたの法律家の「予想」(「期待」ではありません)を裏切らない結論でした。
今回は夫婦同姓規定の最高裁判決をとりあげます。これを合憲とする理由として,最高裁は次の点を挙げています。

(1)姓には家族の呼称としての意義があり、これをひとつに定めることにも合理性があること
(2)どちらの姓を名乗るかは夫婦の協議に委ねられており、民法の規定自体には男女間の形式的な不平等はないこと
(3)現実には女性が改姓することが多いが,通称使用が広まれば,不利益は一定程度緩和されること

もっとも,最高裁は夫婦別姓制度に合理性がないとするわけではなく,立法府である国会で議論され,判断されるべきであるとしています。

実はいまから20年ほど前の平成8年に,「選択的夫婦別姓制度」を導入すべきであるという法制審議会の答申が出ています。夫婦が望む場合には結婚後も別姓を維持することができるとするものです。

ただ,その後も法律改正の機運が高まることなく,そのようななかで,いわば業を煮やして平成23年に提起されたのがこの事件でした。国会で法律改正がなされないこと(「立法不作為」といいます)によって損害を被ったとして国家賠償を求める訴訟という形式をとっています。

平成8年の法制審の答申では,別姓を名乗る夫婦間の子どもは同じ姓を名乗るものとされていました。 ですので,長男は父の姓,長女は母の姓,とすることはできないことになります。

ちなみに,現在でも,外国人と結婚する場合は,夫婦別姓を選択することができます。

結婚相手の外国人の姓を名乗ることもできますが,自分は結婚前の姓を名乗り続けることもできます。

夫婦別姓が認められないことによって確実に不自由な思いをしている人がいる一方で,夫婦同姓を維持すべき確かなメリットは必ずしもありません。同じ姓にしておいた方が夫婦は破綻しにくくなる,子育てがうまくいく,ということも実際には考えにくいです。

また,広まりつつある通称使用と言っても限界があります。運転免許証や健康保険被保険者証などは戸籍上の名前になりますし,公的な場面では通称を通せないという現実があります。

またしても機運を逸することになるでしょうから,国会はもちろん国民のあいだでも法律改正の是非について議論が盛り上がるとよいですね。

弁護士 大川 浩介

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