コラム 108 養育費相場を引き上げれば,それでOK? 2017/1/17

 

コラム108

養育費について,昨年,日弁連が新たな算定方式を提言しました。
養育費の算定に関しては,2003年に一部の裁判官によって発表された算定方式・算定表が実務でも浸透してきました。
日弁連の提言は,この現行の算定方式では養育費が著しく低く算定され,それが別居世帯やひとり親家庭の貧困の固定につながる一因となっているなどとされています。

個人的には,現行の算定方式・算定表には一定の合理性があると感じています。
見聞してきた多くのケースで,支払う側は高すぎるという印象を持ち,受け取る側は少なすぎるという印象を抱くからです。

もっとも,基本的には子どもの数と年齢,互いの収入だけから導き出すため,簡易迅速な算定を目指しているためやむを得ない面もありますが,ケースバイケースの事情をほとんど汲みとられず,必ずしも相当ではない金額が弾き出されることもあります。

また,元々世帯収入が低い家庭では,この養育費では子どもを養えないといった低い金額になることが少なくありません。
ただ,そうだからといって支払う側に余裕があるわけではありません。
それは,夫婦合わせての収入で何とかひとつの家庭を営んできたためであって,離婚となると家計費が二重にかさむ部分が出てきてしまうため,何かと足りなくなることは当然と言えば当然です。

最近,新宿区が実施した,ひとり親家庭を対象とした実態調査の結果が紹介されていました。
そのなかで,養育費が「定期的に支払われている」のは18%であったとのこと。
「不定期に支払われている」の4%を合わせても,支払われているのは2割強にとどまっていました。

現状でもこの低水準なのに,支払われるべき養育費の金額が上がれば,支払われないケースがさらに増えることが容易に想像されます。

急務なのは,養育費が確実に支払われるための仕組みづくりで,日本はこの点が致命的に遅れています。
不履行に刑事罰が科される国もありますが,そこまでしなくとも税金の滞納と同じように扱われて国や自治体によって給与天引きや預金などが差押えされて徴収される,といったハード面の仕組みが検討されるべきです。
ソフト面では,面会交流の充実も図られる必要があります。
もちろん面会交流が制限されるべきケースもありますが,そのような事情がないケースでも面会交流がなされていないことが少なくありません。
離婚した後も非監護親との面会交流を続けることは,基本的には子どもの健全な成長のために資すると考えられますし,当然,養育費が支払われ続ける可能性も高まります。

この点の改善策が講じられないままに養育費の金額を見直すことにどれだけの意味があるのか,とても疑問です。

弁護士 大川 浩介

 

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