コラム 187 財産分与の基準時-ドラマ「グッドワイフ」より- 2019/02/12
現在,常盤貴子さん主演のドラマ「グッドワイフ」がTBSテレビ系列の日曜劇場で放映中です。
アメリカのドラマ「THE GOOD WIFE」をリメイクしたもので,私はこのドラマが好きで,これまで何度も観てきました(シーズン7まであり,スピンオフのドラマもあります)。
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この前の回では離婚事件が扱われていました。
そこでは,財産分与の対象となるのが別居日現在のお互いの財産であるとされていて,現在の保有財産と比べると「取り分」が減ってしまうということでした。
実は,財産分与の方法についての法律の取り決めには「当事者双方がその協力によって得た財産の額その他一切の事情を考慮して、分与をさせるべきかどうか並びに分与の額及び方法を定める」というものしかありません。
このように財産分与の明文のルールがないに等しいことから,裁判例や裁判実務の運用などを事案ごとに当てはめるしかないのですが,まさに本件に該当する裁判例であるかどうかの見極めは簡単ではなく,またその裁判例も必ずしも絶対的なものではありません。
ここが離婚事件の難しいところであるとともに醍醐味でもあります。
どれだけ事案に即した法的主張を説得的に展開できるかがポイントになります。
この,どの時点の財産を分与の対象とするかは「財産分与の基準時」の問題で,これを別居時とするのが近時は一般的です。
別居後に一方が築いた財産は夫婦が「その協力によって得た」とは評価しがたいという考え方に基づきます。
もっとも,ずいぶん古い最高裁の判例には判決時というものもあります。
もちろん,お互いが納得すれば,この基準時に縛られることはなく,自由に分与のありかたを決めることができます。
ドラマのケースでは夫が早く離婚したいという事情があったので夫が金額面で譲歩をしてきました。
また,夫の女性関係が別居からほどなくしてのことであれば,夫は有責配偶者となって,そもそも夫からの離婚請求が簡単には認められなくなる(これも裁判例によるルールです)可能性もあります。
その場合は(ドラマのケースも慰謝料の支払を提示していたので,有責配偶者なのかもしれません),妻は「この条件なら絶対に離婚しない」と迫ることもできます。
つまり,財産分与に関するルールを度外視した,きわめて有利な立場で財産分与も含めた条件の話をすることもできます。
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