養育費の不払い,許すまじ-民事執行法改正- 2016/9/16

 

コラム 79 養育費の不払い,許すまじ-民事執行法改正-2016/9/16

 

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裁判や調停など裁判所において養育費を決めた場合であっても,義務者がこれを支払わないことがあります。義務者の勤務先や預金をもっている金融機関が分かっていれば,裁判所に強制執行の申立をして,給与や預金を差し押さえることにより不払いとなっている養育費を確保することが可能です。
しかし,義務者が預金をもっている金融機関が不明であったり,離婚後に義務者の転職等により勤務先が分からなくなった場合,給与や預金を差し押さえることはできません。強制執行を申し立てる場合,申立をする権利者が,差押の対象について「C株式会社に対する給与債権」「A銀行B支店に対する預金債権」と具体的に特定して申立をする必要があるからです。
依頼者の方にこのような説明をすると,「相手の財産は裁判所が調べてくれないのですか??」と驚かれることもあります。現行制度では裁判所は調べてくれません(調べる権限が裁判所に与えられていない)。
せっかく裁判所で養育費が決まっても義務者の財産の所在が不明だと判決が「絵に描いた餅」に終わってしまうことがありました。

このような事態に対する対策として,法務省が,裁判(調停も含む)で決まった支払義務を果たさない債務者の預金口座情報を裁判所が銀行などに照会できる制度の検討を始めたそうです。検討のため1~2年かかるとみられ,法改正がなされるのは2018年以降に見通しとのことです。
法改正がなされると,養育費だけでなく,これまで回収不能なことが多かった犯罪被害者の損害賠償金等もより回収がしやすくなると思われます。

養育費に限らず,せっかく判決を得ながら相手の財産の所在が分からないため,事実上泣き寝入りを強いられているといったケースがままあります。今回の法改正はこういったケースの救済につながる朗報です。

弁護士 辻 祥 子

 

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