「仕事をするな」という夫はモラハラか 2023/03/17

 

 

コラム219

離婚の相談をお受けしていると

 

「夫から仕事をするなと言われた」

「家事育児に専念して欲しいと言われた」
「仕事をする場合も扶養の範囲内と言われた」

 

という話を耳にすることがあります。「仕事をするなって、これってモラハラじゃないですか?」という質問を受けることもあります。

 

家庭での役割分担や家庭生活で何に価値を置くかは人それぞれなので、妻に家事育児への専念を望むこと自体がモラハラに該当するわけではありません。

 

しかし、冒頭のように「夫から仕事をするなと言われた」とうったえる方は、単に仕事をするなと言われるだけでなく、「お前は家にいるから世の中のことを知らない」「お前はなにもできない」「だれのおかげで生活できていると思っているんだ」と言われたり、夫の機嫌しだいで生活費を渡されないという仕打ちを受けていることがあります。

 

そういった場合は、妻に仕事をさせないことは、妻が経済的に弱い立場にあることにつけ込み、妻を支配しようとする行為の一環だと考えることができるでしょう。

 

理想をいうと、結婚を決める前に家庭内での役割分担などについてお互いの考えを確認したりすり合わせをすることが望ましいのですが、腹を割って話すのが苦手な日本人、なかなか理想通りはいかないことも多いようです。

 

仕事をするということは、時として、パートナーによる支配から自分を守る、あるいはパートナーによる支配から逃れるための大切な手段となります。

 

夫が妻に家事育児への専念を求めた場合、そこには様々な背景があるので、そのこと自体を即座にモラルハラスメントだと断じることはできないのは言うまでもありませんが、仕事をやめるという選択が、時として、支配から自分を守るための手段を手放す危険をはらんでいるということは、頭の片隅におぼえておいていただきたいです。

                                           

                                                 弁護士 辻 祥子

 

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