コラム 104 モラルハラスメントの「鑑別診断」は難しい。2016/12/13



コラム104

本コラムの96でもとりあげた,日経プラスワンの「なやみのとびら」のコーナー。
コラム 96 ヒヤヒヤしてでもヘソクリをすべきか。 2016/11/15

今回は作家の石田衣良さんが回答していました。

50代の女性の悩みをそのまま引用します。

「幸せな結婚生活ですが、夫が『君はいい暮らしをしてるよね。こんなに恵まれて』と言いつづけることに悩んでいます。主人が評価されていないと感じていると思い、感謝の気持ちを口にしない日はありません。でも、主人の口癖を聞くたびに幸福感が目減りしていきます。私の心が弱いのでしょうか。」

石田さんは,モラルハラスメントであると断じて,対処法として,離婚届を示して,改めないのなら離婚すると突きつければよいと回答しています。

私は,これまでたくさんのモラハラ夫(または妻)の話を見聞してきましたが,このケースは,少なくともモラルハラスメントの典型的なパターンではないように思われます。

もちろん,このような物言いをするモラハラ夫はたくさんいますが,この切り口だけというのは珍しく,このほかにもっと手厳しい支配的な言葉を投げつけてくるのが一般的です。

つまり,この相談者さんの夫はただの不安症で,単に,感謝しているというフィードバックがなければ自分に自信が持てないタイプなのかもしれません。

単に弱い人なのか,それとも,いびつな人なのかの見極めがむずかしいです。

仮にモラルハラスメントであったとすれば,その被害に長年遭ってきた人は,石田さんが書いているような対処法を実行するは至難の業です。
ピストルの銃口を夫に突きつけるのと同じくらい勇気が要ることでしょう。

もしも「『幸福感が目減りするから止めて。』ときっぱり言ってしまうと気分を害した夫から何を言われるかと思うと怖い」というのであれば,やはりモラハラに該当するケースである可能性があります。
幸せな生活を提供してやっているという強い観念が夫にあるのであれば,それは健全な夫婦関係ではないと言えます。

モラルハラスメントに及ぶ原因は根深いことが多く,基本的には「治る」ことはありません。「マシになる」ことも少ないです。
年を取って全般的にパワーが低下したことによってモラハラも和らぐことがありますが,こちらも弱くなってきますので,やはりモラハラ被害の辛さは変わらないとは言えます。

離婚を突きつけることは,私は「真に良い暮らしなどしていない」,「真に恵まれてなどはいない」と彼に宣告することを意味します。
それなりの覚悟や準備,計画が必要となってきますので,頼りになる友人や弁護士と相談しながら事を進めていくことをお勧めします。

弁護士 大川 浩介

 

 

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