成年年齢の引き下げと養育費 2022/01/27

 

 

コラム209

成年の年齢を20歳から18歳に引き下げる改正民法が,今年の4月に施行されます。

施行後は,18歳から成人と扱われ,親の同意がなく一人で契約をすることができるようになりますし,また,親権に服することもなくなります。

 

離婚する場合,子どもの親権者を決めなければならず,親権者を父母のどちらにするかが争われるケースが少なくありませんが,今年の4月以降に離婚する場合には,子どもが既に18歳に達しているなら,親権者を決める必要はありません。

 

では,養育費の支払いは,成年年齢の引き下げによって影響を受けるのでしょうか。

昔は,「成年」は,子どもが親から独り立ちし自ら生計を立てるようになる年齢と考えられていたようですが,現在では,大学等に進学し,成年に達した後も修学に励むことは珍しくありません。

 

そこで,大学等に進学する場合には,大学を卒業する時期までは,未だ「未成熟子」であり養育費の支払いが認められるべきと考えられています。

このように,大学等に進学することが予定されている場合には,成年年齢の引き下げは,養育費の支払いが終了する時期に直接影響することにはなりません。

 

一方で,大学等への進学は予定せずに,養育費を「成年に達する月まで」支払うという内容が合意されることもあります。

今年の4月以降に養育費についてこのような合意をした場合には,養育費の支払いは,18歳に達する月までになります。

 

では,今年の4月よりも以前に,養育費について「成年に達する月まで」支払うことを合意していた場合はどうでしょうか。

合意が成立した時点では,法律で成年は20歳と定められており,養育費も20歳に達する月まで支払うことが予定されていたとしても,今年4月の改正によってその支払時期が18歳までに短縮されるのか否かが問題です。

 

この点,法務省は,取決めがされた時点で成年年齢が20歳であったことからすると,成年年齢が引き下げられたとしても,従前どおり20歳まで養育費の支払義務を負うことになると考えられるという見解を明確に示しています。

 

そこで,今年の4月よりも以前に養育費について「成年に達する月まで」支払うことを合意した場合は,成年年齢の引き下げによってもその支払時期が短縮されることはなく,20歳に達する月まで養育費を支払う必要があるということになります。

 

養育費を今まで支払ってきた方が,改正後は18歳に達するまでの支払いで構わないと誤解し,支払いを止めてしまうと,給与や財産に対して強制執行されてしまう可能性がありますので,注意が必要です。

                                           

                                                 弁護士 山崎 悠

 

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