「財産分割」ではなく「財産分与」?―法律用語の難しさ― 2023/06/09

 

 

コラム 227

法律用語には、紛らわしい表現が多く、戸惑われる方も多いです。

 

例えば「財産分与」。

離婚の場面で非常によく問題になるテーマですが、なじみの薄い方は「財産分割」とおっしゃることがあります。

 

一方で、「遺産分割」。

相続の場面でよく問題になりますが、こちらは「分割」が正解で、「遺産分与」という言葉は用いられません。

 

さらに「年金分割」。
これも「分割」と表現されており、「年金分与」とは呼ばれません。

 

かなりややこしいですね。

 

財産分与は、民法に「協議上の離婚をした者の一方は、相手方に対して財産の分与を請求することができる。」という条文から、「分与」と表現されます。

 

実際のところは、夫婦で築いた財産を、いずれの名義であるかに関わりなく分ける制度であるため、「財産分割」と呼んでも必ずしも間違いではなさそうです。

 

ですが、最終的に多く財産を持つ方から少ない方へ「分け与える」形で決着することが一般的であるため「財産分与」と表現することも理解できます。

 

これが遺産の話になると、相続人の一人から他の相続人に「分け与える」のではなく、遺産を相続分に従ってどのように分けるかを決める手続になるため、「遺産分割」と表現されるのでしょう。

 

年金分割は、婚姻期間中に夫婦が積み立てた厚生年金などの納付記録を、按分割合に従い分ける制度です。

 

多い方が少ない方へ分け与えるという意味では「年金分与」と言ってもよい気がしますが、按分割合を定める制度であるため、「年金分割」と呼ばれます。

 

このように法律用語はかなり複雑で、弁護士でも間違えそうになることがあります。

 

法律家でない一般の方が戸惑われるのは当然ですので、間違ったとしても全くお気になさらなくても構いませんし、もし分からない法律用語があれば気軽にご質問いただけたらと思います。

                                           

                                                 弁護士 山崎 悠

 

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