離婚事件に特有の書面作成の難しさ-離婚弁護士の視点から- 2023/08/09

 

 

コラム231

 

現在は離婚を専門的に扱う弁護士として活動していますが、弁護士になってから、交通事故、相続、債権回収、土地・建物の明渡し、近隣紛争など、離婚事件以外の民事事件にも少なからず取り組んできました。

弁護士の主な仕事に、相手方へ送付する連絡文や裁判所に提出する主張書面・準備書面などの書面を作成することがありますが、これまでの経験を踏まえ、離婚事件の書面作成には、他の民事事件と比較して特有(独特)の難しさがあると感じます。

 

その原因の一つとして、離婚事件の書面は、弁護士や裁判官といった法曹関係者だけでなく、双方の当事者本人にも、特に関心をもって読まれる可能性が高いということが挙げられます。

 

離婚以外の民事事件、とりわけ法律の解釈などが争点となる案件では、依頼者の方が「難しいことは分かりませんし、先生に全てお願いしているので、先生の思うとおり進めていただいて構いません」とおっしゃり、弁護士に全面的に委ねられることが少なからずあります。

 

代理人という立場にある以上、どのような書面であれ提出する前に必ずご本人に確認いただくことにしていますが、「弁護士に委ねる」とおっしゃってくださる方からは、すぐさま「この内容で提出してください」とお返事いただくことも珍しくありません。

法律の条文解釈や判例解釈などが争われるケースでは、書面の内容も難解になるため、高いお金を払って弁護士に依頼しているのだから、複雑・難解なことは弁護士に一任したいと思うお気持ちも理解できます。

 

ところが、これが離婚事件になると、事件の顛末がご自身の人生を左右するため、依頼者の方が、弁護士の提出する1つ1つの書面にも強く関心を持たれていることが通常です。

また、相手方本人も、こちらから提出する書面を隅々まで読んでいるなと感じることがあります。

 

離婚以外の事件では、このように、双方の当事者が、弁護士が提出する書面の隅々にまで強い関心を寄せているということは決して多くありません。

 

そこで、離婚事件を扱う弁護士には、特に、自分の提出する書面が双方の当事者から関心を持って読まれることを常々意識しながら書面を作成することが求められます。

このことが、離婚事件の書面を作成する特有の難しさを生じさせているように感じます。

 

このような離婚事件の特色を踏まえても、どのような書面を作成すればよいかという「正解」が、ただちに導かれるわけでありません。

個々の事件ごとに、争いとなるポイントや依頼者・相手方のキャラクターなどをも踏まえ、書面の全体的なトーンや個々の表現を慎重に決定する必要があります。

 

私自身も、反省を繰り返しながら、より適切な書面が作成できるよう日々研鑽を重ねています。

そのなかで、特に心がけていることを紹介します。

 

まず、必要以上に過激な表現を用いると、当事者の感情を煽ることになるため、過度な表現は極力避け、依頼者の代理人として主張すべきことを端的に、理路整然と記述するようにしています。

 

依頼者の方からすると、あっさりしていて、もっと強く言って欲しいと思われることもあるかもしれませんが、相手方の心情に与える影響や、事件全体の進行なども見据えて、その時々で書面のトーンを決めているということを理解いただければと思います。

 

また、難解な法律用語を並べると、依頼者、相手方ともに誤解や混乱を招く可能性があるため、法律上の解釈が争われるような事案であっても、できるだけ平易な言葉を用いて、分かりやすい書面を作成することも心がけるようにしています。

                                           

                                                 弁護士 山崎 悠

 

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