「不貞じゃない!」が通用するでしょうか? 2016/2/12
法律相談の際に「いったい,どこまでが不貞なのですか?」という質問をお受けすることがよくあります。
夫が特定の女性と頻繁にメールのやり取りをしていることに気づき,メールのやりとりを追っているうちに,夫は「仕事」にかこつけていたけれど実際は女性と一緒に食事にいったり,買い物にいったり,休日にレジャーに行ったりしていることが判明しました。妻は,その時点で,夫に不貞を理由に離婚を突きつけたというようなケースです。
夫は,「一緒に遊んでいるだけ,性行為はしていないから不貞じゃない。」と言い張って離婚や慰謝料の請求にはまったく応じる気配がない。
夫のいうことが本当かどうかは分からないけれど,妻も,夫と女性がホテルに入っていく写真等の「性行為」に結びつくような決定的な証拠は握っていません。
妻は,「夫は,もうその女性に夢中で,メールを見る限りほぼ毎日会社帰りに会っているし,休日もほぼその女性のために使っているし…これって『不貞』じゃないのですか?」という冒頭の質問になるわけです。
民法770条1項には裁判所が離婚を認める理由が規定されており,その中のひとつに「配偶者に不貞な行為があったとき」(同条項第1号)があります。
厳密にいうと,性行為がないとここでいう「不貞」には該当しないと理解されています。
ということは,夫婦の一方が家庭も顧みないほど特定の異性と親しくしているのに,「性行為がない」限り離婚も慰謝料も求めることはできないのでしょうか?「性行為」はないけれど,手をつないで歩いたり,抱き合ったり,キスをしたりした証拠写真があるような場合でも我慢しなくてはいけないのでしょうか…?
たとえ性行為がなくても,異性との付き合いが夫婦の信頼関係を損なうものであると認められるような場合には,同条項第5項の「その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき」に該当すると理解されていますし,慰謝料が発生する場合もあります。
弁護士 辻 祥 子
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