タンス預金の財産分与 2016/3/15

 

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日銀のマイナス金利政策などの影響から預金金利が限りなくゼロに近づきつつありますが,その波及効果として,銀行に預金として預けたりせずに,自宅の金庫などにお金を貯めておく,いわゆる「タンス預金」が広がっているそうです。

それに伴って,家庭用金庫の売れ行きが伸びたり,ホームセキュリティに関心を持つ人が増えたりしていると指摘されています。
また,10万円札が新たにつくられるのではないかといった憶測も飛びかっています。「人生ゲーム」ではなじみ深い10万円札が出回ると,たしかに自宅でも保管しやすくなるでしょう。

離婚の場面では,夫婦で形成した預金は財産分与の対象となりますし,それは,このタンス預金も同じです。
預金の場合は,通帳や取引明細書などによってその残高や推移を明らかにすることができます。
しかし,タンス預金はそうはいきません。
これは「へそくり」なども同様ですが,基本的に,「ある」と主張する側が,その存在を立証する必要があります。  家計を配偶者に完全に委ねていた場合,往々にして「もっと財産があるはずだ。隠し持っているに違いない。」という主張が聞かれますが,どこにあるかを特定できなければ,ないものとして扱われることになります。
それをあばいていくのは至難の業です。
なお,誤解されている方がたまにいらっしゃいますが,調停や訴訟となっても裁判所が金融機関に照会をかけて当事者の預金などの財産状況を勝手に調べてくれるようなことはありません。

実際に関与した離婚事件で依頼者の方から聞いた話ですが,押し入れの中に数百万円の現金があるのをみたことがあったものの,後日あらためて確認すると,その現金は全てなくなっていたそうです。
この現金の存在を相手方が否定すると,やはり,ないものと扱われることになります。

では,先の依頼者は,この場合,どうしておけばよかったのでしょうか。
その様子を写真に撮っても十分ではありません。相手方から「自作自演だ。」と言われればそれまでになってしまいます。
存在を相手方にも確認させて,なぜ,そこにあるのかを問いただす,今後も相手方が管理することを約束させる,といったことを録音しておくのも手かもしれません。
あるいは,半分だけ「確保」してしまう,ということも考えられなくもないです。
ただ,このタンス預金を動かすことによって新たな紛争を招くおそれもありますし,どのように扱うかはかなりの難問です。

弁護士 大川 浩介

 

 

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