離婚調停のイメージが持てない② 調停委員 2022/04/04

 

 

コラム214

「離婚調停のイメージが全く持てない。」

相談者や依頼者の方からよく聞く言葉です。

 

この前は,調停の成立という調停のエンディングについてお話ししました。

離婚調停のイメージが持てない① 調停成立 2022/03/07

今回は,なぜ調停で解決するのか,調停委員が何をしてくれるのかについて少し考えてみたいと思います。

裁判所のホームページでは,「調停は,裁判のように勝ち負けを決めるのではなく,話合いによりお互いが合意することで紛争の解決を図る手続です。調停手続では,一般市民から選ばれた調停委員が,裁判官とともに,紛争の解決に当たっています。」と説明されています。

 

調停の期日に調停室で顔を合わせるのは,男女1名ずつの調停委員だけであるということが少なくありません(ケースによっては家庭裁判所調査官も立ち会うこともあります)。

上記の説明には「裁判官とともに」とありますが,裁判官が姿を現すことは多くはありません。

担当裁判官も存在していて,調停成立の時のほか重要な局面で顔を出すことはありますが,「ふだんの現場」は調停委員に委ねられるのが一般的です。

 

各当事者がこの調停委員らと交替で話をすることをくりかえします。

調停委員は,なかには弁護士もいますが,多くは一般の方で,法律の専門家ではない人が大半です。

 

はじめて調停に臨む人は,この調停委員がその時々に有無を言わせないような解決案を次々と示すといったイメージを抱きがちです。

しかし,実際は,調停委員が「この事件では,この論点は,このように解決すべきである」と明示することはほとんどありません。

そのようなことをすれば,公正・公平ではないといった不満をどちらか一方(場合によっては双方)が募らせ,かえって解決が遠のくことでしょう。

 

優れた調停委員は,双方の主張や条件を取り次いで「交通整理」をして,一方または双方に自発的に譲歩させ,それを足がかりにして,他方の譲歩を導くなどして,解決を促してくれます。

時には調停委員が解決案を提示することもありますが,それまでのやり取りから,当事者の双方がその解決案を検討する素地ができている場合であることが多いです。

 

相手方からの提案では受け容れること(検討することすら)ができなくても,調停委員からの提案であれば,それまでに一定の信頼関係が形成されていると,受け容れることができるケースも珍しくありません。

このように,調停前の協議と同様,あくまでも当事者の合意が必要な手続ではありますが,調停前は当事者間でいくら協議しても一向に解決できなかったのに,調停になると確実に解決へと向かうことがよくあります。

 

もちろん,調停で解決ができなければ,次はいよいよ訴訟や審判などの裁判となってしまうという背景も確実にあることでしょう。

そのため,協議で解決することに越したことはないのですが,協議が思うように進まないときは,思い切って調停という次の段階に移した方が,むしろ解決が早いこともあります。

 

調停は一か月に1回程度しか開かれませんが,それでも調停を避けて漫然と協議を続けるよりも確実に解決へと歩みを進めることができるケースもあります。

 

そして,解決のみちすじを調停委員が示すのではなく,調停委員とともに見いだしていくのが調停であると考えています。

                                                弁護士 大川 浩介

 

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