ご自身が公務員の方のための離婚問題

公務員の婚姻費用・養育費

 

別居中の生活費(婚姻費用)や離婚後の養育費を検討する際に,裁判所が作成した養育費・婚姻費用の算定表が実務でも活用されています。

婚姻費用と養育費のおおよその金額は,この算定表に双方の収入をあてはめて算定されます。話し合いや調停の場でも,この算定表が用いられるのが一般的です。

 

公務員の場合は給与明細書源泉徴収票によって収入が一義的に明らかとなることが多く,その場合は婚姻費用や養育費を算定しやすくなります。

もっとも,部署の異動などによって収入が大きく変わった,あるいはこれから大きく変わる場合は,源泉徴収票の数字を機械的に当てはめるだけでは決まらないこともあります。

また,離婚後に扶養手当などがなくなる場合は,この点も考慮して養育費を定めるべきことになります。

 

公務員の場合,婚姻費用や養育費の支払が滞ると,給与を差し押さえられる可能性が高いため,収入に照らし過大な婚姻費用や養育費をいったん合意してしまうとリスクを抱えることになります。

そこで,婚姻費用や養育費については収入に応じた適切な金額を定める必要があります。

なお,収入に照らし過大な婚姻費用や養育費を合意してしまった場合や,合意後に収入の減少があった場合などには,婚姻費用や養育費の減額を求めることができます。

 

公務員の離婚に伴う財産分与

 

預貯金や保険(解約返戻金),有価証券,動産(貴金属,美術品など),自動車,不動産,退職金などが財産分与の対象となり得ることは,普通のサラリーマンや自営業者と変わるところはありません。

 

ただ,国家公務員は,国内各所への転勤があるなどのため,マイホームを持たないことが多いのですが,他方,地方公務員は,住宅ローンを組みやすいこともあり,マイホームの保有率も高く,財産分与に当たって,自宅不動産をどのように処理するかが大きな争点となることが少なくありません。

 

また,公務員の場合は倒産の心配が基本的になく退職金が支給されることはほぼ確実であることから,比較的早い時期から,退職金が財産分与の対象となり得ます。現実に退職金が支給されていないにもかかわらず,退職金が財産分与の対象とされると,離婚時の清算が困難となる場合があります。他の財産によって調整できれば問題はありませんが,他の財産による調整ができない場合には,将来退職金が支給されることを条件として支払いを取り決めることも可能です。

 

さらに,公務員の場合,給与天引きやそれに準じる形で,長年にわたって共済組合などに積立てをしていることもありますので,給与明細書の検証も必要となります。